僕の心の言の葉。

短い自作小説、作文のブログです。多くの人に言葉が届いてくれたら嬉しいです。

『誰かに』

 誰かに気づいて欲しかった。誰にも迷惑なんか掛けるつもり無かったんだ。そこに先に居たのは僕だったのに、君はいつも僕のことを邪魔そうな目で見るんだ。いや、君だけじゃない。誰もが僕のことを邪魔そうな目で見る。そんなに君は偉いのか?僕も君も命があるんだから同じじゃないか。

僕はこれでも毎日生きるのに必死だ。本当は僕だってもっと美しくなりたいけれど、僕が必死に頑張ったって皆には敵わない。誰かに必要とされることなんて有りはしないんだ。でも、それでも僕だって一生懸命生きたいから。せめてこの今僕がいる小さなスペースで良いからこのまま生きさせてくれないか。

君の目線が前に増して胸に刺さる。僕だって生きているんだもの、少しは大きくなるよ。君はそれすらも気にくわないんだね。君が僕を見て小さく何かを呟いているけれど僕には聞こえない。どうせ聞こえても君が何を言っているかは分からないけれど、多分悪口なんだろうな。

最初は誰かに必要とされたかったんだ。でも僕はここで生きるって決めたから、誰でもない君に必要とされたくて必死だった。必死に僕が生きれば生きるほど君には逆効果だったんだね。僕は悲しい。

僕は頑張って小さな小さな儚い花をつけた。僕の命はここまでだって悟ったから。君は僕を躊躇うことなく摘み取った。さよなら。薄れる意識の中で僕がいた場所に美しい女性が笑って命を輝かせているのを見た。あぁ、僕も来世は誰かに必要とされる人生でありたいな。誰かに必要とされて、君が僕を必要としてももう遅いって勝ち誇りたい。誰でもない誰かに…

 

 私はスッキリとした花壇を見て、清々しい気持ちでした。「明日、ゴミ捨てに行かなくちゃ。」

 

 

あとがき:昨日に近いながらも昨日よりも複雑な気持ちになって頂けたらなという思いで書きました。こういう文章の時は多くを語るよりも感じて頂きたく思います。読んで頂きありがとうございます。それではまた別の文章で。

『花は口よりも雄弁である』

 どうもどうもお初にお目に掛かりますね。

え?姿が見えないって?嫌だなぁすぐ側にいるじゃないですか。足元ですよ足元。そうそうそこにいるでしょ私が。花ですよ花。名もなき路傍の花でございます。

貴方、暇そうにしているから少し私の話を聞いていって下さいよ。暇じゃないって?嫌だなぁ、さっきどうやって時間潰そうっておっしゃってたじゃあないですか。意外と良く聞こえるもんなんですよ、こう見えても耳は良いんでね。

…あ、花はあっても耳は無かったか。これは失敬失敬。まぁそんなことは置いといて、少しお時間ちょうだいいたしますね。

 

 改めまして、私は花でございます。本当に只の路傍の花。貴方を呼び止めましたのはほんの気まぐれってだけじゃなくてちゃんと伝えたいことがありましてですね、まぁ気まぐれで誰かを呼び止めたくなるくらい暇なことには間違いないんですけどね。だってここで咲いているくらいしかすることが無いんですから、本当に最低な一生ですよ。

まぁそんな私の話は置いときましてね、貴方、何か悩んでることがあるでしょう。こう見えても私だって一端の花でございます。本当は誰かに見て貰いたくてこうして咲いているんですけど、誰にも気づいて貰えないから逆に人を見ることにした訳なんですよ。貴方、いつもこの道を通るでしょう?しかも必ず下を向いて。ずっと下を向いているくせに私のことには一切気づかないんだもの、これは視界が狭くなってるなと勘付いたんですよね。

なになに?友達が出来ないだって?なるほど、確かにそりゃあ下も向きたくなる。でも視界が狭けりゃ、世界も狭く考えているんじゃないかい?この世界にはいろんな人がいる。私が見てきただけでも数え切れないんだからきっとよっぽどの数さ。その中で友達になるのはほんの一握り。だから貴方は出会いを大切にしなきゃいけないよ。そんな狭い視界じゃ相手のことなんて何も見えやしない。相手のことをもっと知ろうとするんだ。不安だって?そんなこと言わずに人間やってみればどんなことでもなんとかなるもんさ。まぁ私は花なんだけどね。

私は貴方に気づいて貰えて、こうして話せてとても嬉しい。きっと人同士だって相手のことを良く知って話せば喜んで貰えるさ。ほら!頑張りな!これで私の話は終わりだよ。話に付き合ってくれてありがとう。

 

 次の日、そこに花は無かった。これは手も口もない唯の花に、背中を押された私の不思議な話。

 

 

あとがき:今までとちょっと変わった感じのお話にしました。人によっては読みにくかったりする文章かもしれません。何気ない普段と同じ景色の中にも新たな発見があることって少し幸せな気分になれると思います。花から見たお話はまた機会があれば書いてみようかなと思います。

それではまた別の文章で。

『それはまるでリンゴのように』

今週のお題「新しく始めたいこと」

 

 私が新しく始めたいことは、思いを言葉にするということだ。一口に思いと言っても様々だろう。喜び、哀しみ、怒り、楽しさ、そしてその思い毎に伝えたい相手は違うことと思う。思いは伝えることで二倍にも三倍にも膨らんでいくと思う。楽しいこと、嬉しいことはもちろんのこと、哀しいことだって信頼出来る人に伝えた方が早く気持ちを整えられるだろうし、怒りだって原因を相手に伝えなければその人は変わらないままだ。もしその相手が大切にしたい人ならば貴方が素直にぶつかってあげる。もしそこで喧嘩になったとしてもお互いに大切な人ならきっとより強い絆が出来ることと私は思う。

 

 なぜ私が思いを言葉にするということを新しく始めたいか。それは私が思いを上手く表せてこれなかったからだ。信頼してた人にも。大切だった人にも。私は上手く伝えることが出来なかった。

 

 私の思いはリンゴだ。見ただけでは色や大きさしか伝わらない。私はリンゴをかじった。私の口の中にリンゴの甘ずっぱさが広がってとても爽やかな気分になる。そう感じて、私は

「このリンゴは美味しいね。」

そう言った。それしか言えなかった。これが今までの私だ。相手には何も具体的に伝えられていなかったのだ。私の思いは結局自分の中で立ち止まり、外へと出ることは無かった。

 

 私はこのことを変えていきたい。

 

 だから新しく始めた行動として挙げられるのがこのブログである。自分で言うのは恥ずかしいが、口下手な私も文字では饒舌だった。これなら多くのことを伝えることが出来る。苦手を克服することももちろん大切だ。でも得意なことを活かして行きたいと思った。

 リンゴだって私から伝えるのではなく多くの人に手に取って貰い、自分自身の手で食べてみるのが一番早い。だから私は今日もこの思いを文字にして、言葉にして、伝えようともがき続けるのである。

 

 届け。私のリンゴよ。

 

 

あとがき:お題を使って文章を作るというのもとても勉強になります。私にとって新しく始めたことがこのブログであったので、そこに至る思いをつづってみました。少しクサイ文章になってしまったかもしれませんが、文章にある通り私の思いが伝わって欲しいことと思います。そんな訳で、今日は改めて私の気持ちをテーマに書かせて頂きました。

読んで頂きありがとうございます。それではまた別の文章で。

『アンハッピーバレンタイン』

 今日はいつもより一層面倒だ。何より後ろに積んでいる荷物を取り出そうとする度にどうも甘ったるい匂いがする。別に俺は甘いものが嫌いとかそういうことではない。ただ、その甘い荷物の中に一つも俺に宛てた物が無いというのが俺の気分を沈ませている原因だった。まぁ今までで貰った数も片手に収まる程しか無いのだが…。

 サラリーマンになっていれば義理チョコなら沢山貰えたのだろうかなどと考えているうちに次の目的の家に着く。俺は甘い匂いのする袋の一つを抱えてチャイムを押した。出てきたのは若い男性。真面目そうで、少なくとも俺よりはイケメンだ。荷物を渡すと男性は目を輝かせた。遠くにいる彼女からのものらしい。正直そんなことを俺に説明されても困る。さっさと仕事を終わらせたかった。

 肉体的だけでなく精神的なダメージも受けながら仕事をこなしていく。次の荷物からも甘い匂いがした。チャイムを押す。出てきたのは小さな女の子だった。小学校低学年くらいだろうか。俺は聞いた。

「お届けものです。お母さんかお父さんはいますか。ハンコかサインが欲しいのですが。」

「お兄さん!それかなちゃんから?チョコかなぁ!」

流石に戸惑う。宛先を見ると確かに女の子が望む物ではあるようなのだが…。

「多分そうだと思うよ。申し訳無いんだけど、ハンコかサインが無いと渡せないから、お願い出来るかなぁ。」

精一杯の笑顔で俺は言う。子供は好きなのだが、仕事中だとどうも対応が難しい。

「分かった!」

女の子は元気良く答えると家の中に戻っていった。少し時間が掛かっていたので、俺はてっきり女の子の親が出てくる物だと思っていたが、出て来たのは先程の女の子だった。

「はい!これハンコ!後これもお兄さんにあげる!」

女の子は俺にハンコと市販で売っているチョコを渡して来た。

「かなちゃん今遠くて中々会えないから電話で今年もチョコ交換しよって話してたの!嬉しいからお兄さんにもこれあげる!」

俺は一瞬何が何だか分からなかった。女の子の目を輝かせている様子だけが俺の目に映った。

俺は我に返り、女の子にありがとうと精一杯の笑顔を見せるとハンコを渡してそのチョコを受け取った。

 嬉しいとか幸せとかは思わなかったけれど、ただ漠然と頑張ろうと思った。俺自身は幸せな訳では無いけれど、俺が荷物を届けることで誰かが幸せな気分になってくれるならそれはそれで良いのかもなと思ったのだ。俺は女の子から貰ったチョコを口の中に入れると、車のエンジンをかけた。今日の仕事をこなすために。

 

 

あとがき:皆さんチョコは貰えましたか?私は貰えてません!悲しいです。そんな気分もありまして、今日の文章の内容に至りました。バレンタインにも人によって様々な形があることと思います。幸せな気分とはいかなくても、嫌な一日だったと思わない日になると良いですね。

もちろん私もなのですが。

それではまた別の文章で。

『ライアーライアー』

彼女は嘘つき。

ケガをしたとか熱があるって言って、僕を慌てさせる。心配させたかっただけと言うけれど、本当に調子が悪い時もあるから彼女は手強い。心の調子が悪い時もある。だから側に居てあげよう。

 

彼女は嘘つき。

待ち合わせをして彼女は少し遅れてきた。寝坊しちゃったと彼女は言うけれど、彼女が今日のためにいろいろと準備していてくれたことに僕はサプライズされるまで気づかなかった。僕を祝ってくれた時の彼女の満面の笑みを僕はずっと忘れることが出来ないと思う。

 

彼女は嘘つき。

普段からしてるからこのくらい普通だよ。そう言って作ってくれた君の手料理。親指に巻かれた絆創膏が、珍しい君の強がりを教えてくれて僕はとても幸せに感じた。

 

彼女は嘘つき。

ある時突然別れようと彼女は言った。どうせいつもの嘘なんだろうと僕は思った。そう信じたかった。僕は彼女の顔を見た。いつもの嘘をついた後の笑顔だった。でも彼女は何も言わなかった。僕は彼女の目に微かに光るものを見た。

なんで。そう言った。好きじゃなくなったの。そう答えた。そうか分かった。僕がそう言うと、彼女は僕に背を向けて遠くへ行ってしまった。本当に言いたかったことは何一つ言えなかった。

僕も嘘つきだ。

 

彼女と再びどこかで出会えたとしても、きっと僕は素直になれない。君もきっと全ては素直に話してくれないだろうな。

結局僕らは嘘をつき続ける。僕らはきっとそれで良いんだ。

 

 

あとがき:切ない話を作ってみたくなりました。

上手く出来ているでしょうか。嘘というのは人を傷つけるだけでは無くて相手を守るためにもあるのかもしれません。でも、その嘘は本当は真実かも…。その真実は嘘かも…。そういう風に思い始めたら、きっとその相手を素直な目では見れないですよね。出来る限り本心で語り合いたいものです。その相手が大切な人であるなら尚更…。

それではまた別の文章で。

『日々を変えたくて』

 その箱は私を憂鬱へと運ぶ。

学校や仕事、バイトなど私を目的の場所へと運んで行く。道中で私は僅かな休息を取った。それで疲れが取れるかと言われればそれは否である。所詮気休めだ。いつも通りの時間にいつも通りの場所に私は目的の場所に到着した。いつも通りの日々が今日も始まった。

 

 その箱の存在が私の憂鬱になる。

時間を確認するのが億劫になる。このまま家でのんびり過ごしたいのに。その思いとは裏腹に私は今日も玄関のドアを開けた。大丈夫。所詮いつもと変わらない日々が待っているだけだ。私は自分にそう言い聞かせた。

 

 ある日私はいつものように箱の中にいた。

それは夕暮れのことだった。いつもと変わらない道のりで私は偶然美しい景色と出会った。川に、落ちていく太陽の日差しが差し込んで水面が美しく輝いているようだった。オレンジ色の流れ。それは子供の頃、友人と自転車の上で見た懐かしい景色に似ていた気がした。少し涼しいくらいの吹く風が、自分のどこに眠っていたのかも分からない遠い昔の記憶を思い出させたのだ。それは箱の中では起こり得ないことだった。

 

 その箱は私をどこへ運ぶのか。

今まで気づかなかった。目的地へ行く手段に過ぎなかったその箱は、私の可能性へと変わった。時間に余裕がある時は意味も無いところで降りたりした。もちろん本当に意味が無い時もあった。でもいろんな発見もあった。ここは空気が綺麗だとか。ここにちょっとおしゃれなカフェがあるなとか。たまたま立ち寄った古本屋で昔欲しかった本を見つけたりした。

些細なことだが、全て箱が私を導いてくれた。

 

 その箱は私を変える。

いつもと変わらない日常を変える可能性を持っている。あと必要なのは少し道を逸れてみる勇気と自由な時間。それがあれば貴方の日常の中にも新たな発見があるのかもしれない。

 

 

あとがき:私は電車を使うことが多いので最初は箱=電車のつもりでした。でも車もバスもそういった乗り物は全て便利である代わりに私達を箱の中に一時的に閉じ込めます。たまには歩いて周りを見てみるのも良いかもしれません。

そんな偶々違う駅で降りた時に思った私の心でした。

それではまた別の文章で。

『上を向いて』

 白い一室。窓際のベッドの上で君はいつもと同じように外を眺めていた。邪魔をしては悪いと思い、僕はいつも静かに入ろうとするのだが、君はすぐに気づいて同じ言葉を言う。

「また来たのか、君は。」

この言葉に対する僕の返答も慣れたものである。

「ただ僕が行きたいだけなのさ。たまたま僕がここに来た時に、君が同じようにして居るだけ。君こそ外にでも出たらどうだい?」

「余計なお世話さ。」

そう言って君は笑う。その笑顔はいつもと変わらない。そうして僕らはいつもと同じように世間話を2時間ほど。昨日のテレビが面白かったとか、あの本がつまらなかっただとか。そうした日々が僕にとってとても幸せだった。

 

 いつもは「またな」と言い合うだけなのだが、その日君は申し訳無さそうな顔で言った。

「それにしても僕のせいで君にはいつも下を向かせて悪いね。首、痛めたりしないかい?」

返答に困った。いつも強気な君が気を使うなんて珍しいから。でも君に余計な心配はかけたくなかった。

「痛めたりなんてしてないさ。君こそいつも上ばっかり向いてたら、気づかない内に落としたものに気づかないんじゃないか。また明日も会うかもしれないな。またな。」

そうして僕はその部屋を後にした。僕は君のその申し訳無さそうな顔をこれ以上見ることに耐えられなかった。

 

 次の日も君はいつもと同じ場所に居た。

「今日は良い天気だなぁ!」

君は僕に気づくなりそう言った。いつもと違う第一声に、僕は少し驚いたが慌てた態度を見せるようなことは無かった。

「そうだな。」

覚悟はしていた。しかし僕はそれ以上の言葉を返すことが出来なかった。僕はその場から動けずにうつむいた。君の笑顔はいつもと変わらない。僕の考え過ぎかもしれない。君の笑顔はいつもと変わらない。少なくとも僕にはそう見えたのだ。

「君はまた下を向いて。ダメじゃないか。下に落とした物には気づくかもしれないけど、新しいものが何も見えやしないじゃないか。こんなに綺麗な空なのに、上を向かないなんて勿体無いよ。君には…」

そこで君は言いかけていた言葉を飲み込んだ。僕にはその言葉の続きが分かっていた。いつもと変わらない笑顔のままうっすらと目の端に涙を浮かべている君の表情が何よりも僕の心に君が伝えたいことを届けていた。

僕は声を振り絞って言った。

「また明日も来る。きっとまた明日もここで偶然君に会うだろう。明日も良い天気だと言っていたから明日はちゃんと上を向くさ。またな。」

僕は君に背を向け歩き出す。もっと側に居てあげたかった。でも僕の心が耐えられそうになかった。

「じゃあな。」

君の声が聞こえた。いつも通りまたなと言って欲しかった。

 

 次の日、君はもういつもの場所には居なかった。君はこの世界のどこにも居なくなってしまった。

 それ以来僕は下を向かなくなった。その代わりに上を良く向くようになった。君は雲となって青い空に浮かび、夜には冬の澄んだ星空の一部となって、僕が下を向くのではないかと見張ってくれているような気がした。この空を教えてくれたのは君だ。この星空を教えてくれたのは君だ。そんな君にもう心配をかけたくなかったから…。

 

だから、僕は今日も上を向いて。

 

 

 

あとがき:小説寄りの文章としては初めて載せるかもしれません。皆様は大切に思う人がいるでしょうか。大切な人というのは自分にとって、冬の夜空の中で光る星のようだと私は思いました。時々は後ろを振り向いたり、下を向いたりして、今までを見返すことも大切だと思います。ただ日々を進む私達にとって前向きであること、上昇志向であることはもっと大切であるということ。そして悲しい時こそ、その事を忘れてしまうのではと考えこのような文章へと至りました。

拙い文章をお読み頂きありがとうございます。それではまた別のお話で。