『陽の光』
月が綺麗です。
昨日も一昨日も、その前の日も。
毎日少しずつ形を変えて輝く夜空の主は、
何も変われていない私のことなど見えていないのでしょうね。
星が綺麗です。
昨日も一昨日もその前の日も。
時には見えない日もあるけれど、いつだって自身の命を賭して、一つ一つが輝くのでしょう。
私も輝くことが出来るのでしょうか。
夜の街は静かです。
春は微かに桜の匂いがします。
夏は遠くで虫の命が聞こえます。
秋の紅葉が歩く道を染めて、
今私は澄んだ空気の街を最後の力を振り絞る街灯に照らされ歩いて行きます。
目的地などありません。
途中で黄色の小さな花を見つけました。
どうやらまた春が来るようです。
遠くの方で鳥の鳴き声がします。
地平線の向こうから冷たい世界に暖かさが入り込んで来ました。
命の暖かさを感じます。
いつ以来でしょうか。
私の世界の中に暖かさを感じたのは。
私の世界の中には輝きはあっても暖かみはありませんでした。
どれもこれも目を閉じていたようです。
私と違って。
鳴き声に合わせて命が目を覚まします。
もっとこの暖かさを感じていたい。
その思いを遮るかのように私のまぶたはこの世界を閉ざそうとします。
あぁ、今日も駄目だった。
私の世界が再び開かれると、暖かさの主はこの世界に昨日と同じサヨナラを告げようとしていました。
明日は。
明日はきっと、狂ってしまった私の世界にも命の暖かさが欲しい。
そうして私はこの世界に自分の意思で今日のお別れを告げました。
明日の私に陽の光を。
あとがき:詩に近い文章を目指して書きました。恥ずかしながら春休みの影響で夜型になっていることから思いついた文章です。私も気をつけたいと思います。
それではまた別の文章で。