僕の心の言の葉。

短い自作小説、作文のブログです。多くの人に言葉が届いてくれたら嬉しいです。

『想像力豊かな少年のお話』①

 僕は広大な高原の中に居ました。草が青々と生い茂り、空には綿飴の様に柔らかな雲が漂っています。

 遠くの方に羊の群れが有りました。ここからでは正確な数は分からない程の大きな群れです。良く見ると柵が有ります。しかしすぐには気づかない程の低い柵でした。

 羊が1匹、また1匹と柵を飛び越えていきます。僕は自然とその数を数えていました。数えた羊が30を超えるころ、1匹の羊が飛べずに柵にぶつかりました。羊はぶつかった衝撃でよろけました。すぐには立ち上がりません。僕は心配になって近寄ろうとしました。すると。羊はよろよろと立ち上がり柵から少し距離を取りました。僕は立ち上がった羊に目が離せません。その羊の目は強く生き生きとしており、諦めるという言葉など忘れてしまった様な目をしています。羊は再び走り出すと柵を飛び越えようとします。再び柵にぶつかりました。羊は先程より早く立ち上がり距離を取ると直ぐに挑みます。何度もぶつかり、その度に何度も立ち上がりました。僕はその光景に他人事の様には思えなくなっていました。羊は今まで以上に早いスピードで柵に突っ込んでいきます。

「頑張れ。頑張れ!」

その時。一筋の風が高原に吹き渡りました。爽やかな、春を感じる風。羊は風を受け大きく飛び上がりました。

「メェーーー!」

 

 次の瞬間、僕は布団の上に居ました。いつもと同じ時間です。ぐずぐずしている暇はありません。早く準備しなくちゃ。僕は歯を磨きながら先程の羊のことを考えていました。あの羊は何だったのだろう。それでも僕はなぜか誇らしい気持ちでした。今日も僕の1日が始まります。

 

 

あとがき:眠れない時に皆様はどうしますか。人にもよることと思いますが、私は羊を数えたりするのです。朝起きた時には何匹羊を数えたのかなんてすっかり忘れてしまっているものです。それがとても不思議に感じるのです。この「僕」の物語は他にも書けたらなと思います。読んで頂き有難うございます。それではまた別の文章で。