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僕の心の言の葉。

短い自作小説、作文のブログです。多くの人に言葉が届いてくれたら嬉しいです。

『微糖』

 私は眠い目を擦りながら缶コーヒーを手に取りました。独特な深い香りに心なしか眠気が取れていくようです。

 ブラックは飲めません。正確に言えば飲めるけれど、まだ苦くて好きではないのです。私のバイト先に訪れるタクシーのおじさんは必ず同じ缶コーヒーとタバコを一箱買っていきます。必ず同じ種類のブラックの缶コーヒー。やはりメーカーが違えば味も香りも違うのでしょう。まだブラックの美味しさを知らない私にはまだまだ遠いお話のように思えます。

 私の弟がコーヒー牛乳を飲んでいます。その姿に私は過去の私を重ねました。ブラックのコーヒーに牛乳を注ぐ。分量は半分ずつと自分の中でのこだわりがありました。もちろん今でもコーヒー牛乳やカフェオレを好んで飲むときがあります。甘くて優しい味。優しいながらもしっかりとしたコーヒーの香りが残っています。唯一違うのは飲んだ後の私の感想でしょうか。今は美味しいと思います。美味しいという思い以外には浮かばないのです。昔の私はどうであったのか。私は覚えているのです。幼き私がコーヒー牛乳やカフェオレを飲む度に、少し大人な気分になれたことを。父親が飲んでいるものと同じ香りがするものを飲んでいることが妙に誇らしかったのです。それも今となっては遠いお話に過ぎません。

 子供には戻れない私。大人にはなりきれていない私。そんな私には微糖の缶コーヒーがちょうど良いなと思うのです。寒空の下で白い息を吐きながら。

 

 

あとがき:共感して貰える作文を目指しました。もちろん味といったものには人それぞれに好みがあるので、ブラックが良いとかカフェオレが良いとかあると思います。しかし私の中ではどうしてもブラックは大人という印象があるのです。読んで頂きありがとうございます。それではまた別の文章で。